パイプカット手術とは
結婚して子どももいて、もう子どもを増やす予定のない夫婦にとって1つの選択肢になりうるのが「パイプカット」です。正式名称は「精管結紮(せいかんけっさつ)」といいます。
男性の精巣(睾丸)から精嚢へとつながる管を切ってしまうので精液に精子が混ざることはなく、ほぼ確実に避妊を行うことができます。
どこを切るのかというと、陰嚢(いんのう・俗に言う「玉袋」)の皮膚を5mmほど電気メスで切り、そこから精管を引き出して切るのです。切断面を電気メスなどでふさいで陰嚢に戻し、傷口を縫っておしまいです。
手術そのものは局部麻酔だけで行われ、30分程度で終わります。全身麻酔ではないので入院はせず、数時間病院で休んで経過に異常がなければ即日帰宅できる、比較的安全性の高い日帰り手術です。
約1週間後に抜糸をします。傷跡はわずかなことと陰嚢のシワがあるので、見た目は全く目立ちません。
睾丸を取り除くわけではないので、男性ホルモンに影響や変化はありません。
手術と手術後の痛みは?いつから避妊効果が出るの?
麻酔をしているので手術そのものに痛みはほとんどありません。
局部麻酔なので、人によっては「精管を引っ張る感覚が鈍い痛みに感じる」という人もいますが、切る痛みなどは全く感じないそうです。どちらかというと、麻酔を打つ一瞬の注射の方が痛いようです。しかし陰嚢の「皮」そのものは意外と痛みに鈍感な部位らしく、普通の注射より痛くないという声も多いです。
手術後は1週間入浴は禁止です。お風呂に浸からなければ、シャワーは術後4日目から大丈夫です。臭いが気になる人は、濡れタオルなどで身体を拭きましょう。
その期間はもちろん性行為もマスターベーションも禁止です。激しい運動も避けましょう。
1週間後の抜糸まで、術後は鈍痛をどんよりと感じる人もいるようです。
患部が腫れたり、激痛を感じるなら内出血や化膿している可能性があるのですぐに病院に行きましょう。
パイプカットをしたからといって、すぐに避妊効果が得られるわけではありません。既に体内で作られている精液内に精子が混ざっているからです。抜糸後、15回ほど射精を行うまではコンドームなどで避妊をしましょう。
手術してから1カ月後に精液を採取して病院で検査をしてもらい、精子が混ざっていなければ不妊手術の完了です。検査までにマスターベーションも含んで15回ほど射精をしておく必要があります。
パイプカットをしても射精はします。何が出るのかというと、これまで通り精液が出るのです。精液に精子が含まれていないだけで、勃起にも感度にも射精感にも、影響はありませんので安心してください。
女性が行う卵管結紮手術よりはるかに軽い手術だと言えます。

病院は何科?保険は効く?費用は?
総合病院でも大学病院でも個人医院でも、手術は泌尿器科か美容整形外科で行っています。
避妊手術ですので、一般の病気やケガとは違いほとんどが保険適用外です。保険診療とはならないので金額は病院によって大きく変わり、価格相場は5万円~20万円と幅があります。
泌尿器科の方が安い傾向にありますが、事前に料金について相談・問い合わせをしておきましょう。
新宿中央クリニックは、都内最安値と言われています。別料金を出せば全身麻酔にも対応してもらえるそうです。怖がりさんにはありがたいですね!
パイプカットを受けるには条件がある。その理由は
不妊手術は母体保護法(昔は「優生保護法」と呼ばれていました)という法律のガイドラインに基づいて治療・手術が行われます。
したがって、誰でも簡単に手術が受けられるわけではなく、基本的には「子供が最低1人いる、配偶者(事実婚を含む)の同意がある既婚男性」を対象としています。実際に手術を受けるのは30代後半~40代、50代の方が大半です。
奥さんと一緒に来院することを条件としている病院もあれば、妻の同意書の提出のみでOKな病院もあります。本人がいないと同意書を偽造することも可能なような気がしますが・・・中には、ごくわずかですが同意書不要な病院もあります。
しかし20代の独身者や子供がいない人でも、本人が「子供ができない」ということを十分に理解した上なら手術をしてくれる病院もあります。
パイプカットをすると、自然なセックスでは女性を妊娠させることが出来なくなります。目的が「避妊」のための外科手術なので、ほぼ確実に永久に100%の避妊率です。0.05%以下の割合で、自然に精管が元に戻る(繋がる)ことがあるそうですが、そうでもない限り避妊失敗ということはありません。「絶対妊娠しない」と言いきることは出来ませんが、「ほぼ100%」でしょう。
将来子供が欲しいと思った時に、精管を繋げる復元手術を受けることも可能ですが、顕微鏡を使った難しい手術となり、全く元通りに戻すことが出来るかどうかはわかりません。そうなると睾丸から精子を採取して体外受精・人工授精する方法でしか妊娠が不可能になります。
未婚者だけでなく、既婚者でも、万が一パートナーと離婚や死別して再婚した際に、子どもが欲しくなるかも知れません。
年齢の若い、大学生の彼氏と気軽に決めることではありませんし、しっかりとした考えと決意、パートナーの同意が必要です。
パイプカットのメリットとデメリットは
パイプカットを受けるメリットは、何と言っても確実に避妊が出来るという点でしょう。
しかも女性側でピルやリングなどで避妊をすることなく、「生」で膣内射精(中出し)できるというのは、男性にも女性にも喜ばしいことであり、安心感のあるセックスで快感も大きくなる人が多いです。
何のメンテナンスも必要なく、永久に避妊出来るのはとても楽ですね。
一方のデメリットは、万が一子どもがまた欲しいと思った時には限りなく難しくなるという点です。そして、避妊はできても性病を予防することはできないので、結婚している夫婦など特定のパートナーとのみ性交渉をする人でないと性病感染の危険性はあります。