卵管結紮(けっさつ)手術とは
女性が行う永久避妊手術の1つに「卵管結紮(らんかんけっさつ)」があります。
簡単に言うと、卵管をプラスチック製のバンドで留めたり、卵管を切断して糸で縛る、という方法で、卵子が子宮に入るのを防ぎ、また精子が卵子と出会うのを防ぎ、妊娠を防止する避妊方法です。
永久避妊法とは言いますが、100%完璧に避妊できるとは限りません。
下の表は各種避妊法での「避妊失敗率(妊娠率)」です。
出典:https://drjengunter.wordpress.com/2011/08/11/what-is-the-best-method-of-birth-control/
卵管結紮は【避妊失敗率 0.5%】となっています。驚くことにピルより多いですね。
卵管結紮手術をしても卵巣機能は変わらない為、排卵はそれまで通り行われ、子宮内膜もそれまで通り厚くなり、生理も変わらずあります。卵管を通れなかった卵子は自然と体内に吸収されます。
そして手術をして卵管をプラスチックのバンドやクリップで縛ったり留めたりした場合、精子が通過可能な隙間が出来る可能性があることと、卵管を切って縛った場合でも、縛った糸が自然とほどけてしまう場合があることによります。
もちろん稀なケースではありますが、100%完全に避妊できるというわけではないということは理解しておきましょう。
また、そのような場合で望まない妊娠をした場合、子宮外妊娠になることが多いようです。

手術と手術後の痛みは?後遺症は?
卵管結紮手術は一般的に、帝王切開で出産する時に同時に行うことが多い手術です。
帝王切開での出産は術後に子宮が癒着を起こしやすく、2度、3度と帝王切開を行うことで子宮壁が薄くなり、妊娠している最中に子宮破裂などを起こすリスクが高まると言われています。帝王切開を繰り返す妊婦さんの場合、妊娠中にお医者さんから家族計画・避妊手術についての意向を聞かれることがあります。
帝王切開は局部麻酔で行い、赤ちゃんを取り出して胎盤を取り出した後、そのまま卵管結紮の手術を行います。卵管への痛みはほとんどなく、帝王切開後の子宮の戻りの痛み(後陣痛)だけです。
帝王切開分娩の時ではなく、通常の状態で手術を受ける際は、腰椎麻酔で下半身への局部麻酔をかけ、おへその下を2,3cm切る開腹手術をします。小さな穴だけをあけて行う腹腔鏡手術をする病院もあります。
手術前に絶食や浣腸、尿道カテーテルなども必要になることが多く、手術そのものは15分~30分程度で終わる比較的簡単なものですが、それまでの準備は一般の手術と変わりません。
また、「日帰りでOK」という病院と、「入院が必要である」という病院とがあります。
男性が行うパイプカットと比べると、格段に大変な手術だと言えるでしょう。

排卵も生理もそれまで通り続きますし、更年期障害がひどくなる、頭痛、太る、生理不順になるなど間違ったうわさもありますが、そのような後遺症は報告されていません。
保険は効く?費用は?
パイプカットと同じく、避妊手術は一般の病気やケガとは違いほとんどが保険適用外です。しかし病院側が「これ以上の妊娠は生命に関わる」と判断した場合は保険適用してもらえることがあったり、病院の方針で複数回の帝王切開後は無料になったりするところもあるようです。
しかし多くの場合、手術をするかどうかは医師の判断ではなく(お医者さんはお伺いをたててくるだけ)個人の意向に任されているので、保険診療とはならず金額は病院によって大きく変わります。
帝王切開分娩と同時に行う場合は5万~15万円、分娩時ではない時に行う場合は10万円~20万円が相場だとされています。
卵管結紮手術を受ける条件とは
不妊手術は母体保護法(昔は「優生保護法」と呼ばれていました)という法律のガイドラインに基づいて治療・手術が行われます。
手術をする際には配偶者の同意書が必要となります。これは、卵管結紮手術を受けると、ほぼ100%、通常の妊娠は望めません。そのため、夫婦間で合意が必要となるのです。
卵管結紮後、子どもが欲しくなったらどうするの?
卵管結紮手術をした後でも妊娠したいと思う時が来るかも知れません。
卵管を元に戻す手術は、結紮部をプラスチック製のゴムバンドで留めているかクリップで留めている場合比較的可能なのですが、切断している場合は成功率は極めて低くなります。
万が一卵管が元通りにならなければ、体外受精での妊娠という選択になります。
卵管結紮のメリットとデメリット
卵管結紮のメリットはやはり何もしなくてもほぼ確実に避妊出来ることでしょう。毎日ピルを飲んだり、数年に一度のメンテナンスを受けながら避妊リング(IUD、IUSミレーナ)を装着したりすることを考えると、楽ですね。また副作用や後遺症などの心配もないので、安心です。
反対にデメリットは、費用面や、手術にかかる内容になるでしょう。帝王切開と同時に行わない場合は特にそうですね。費用も大きいうえに、背中の腰椎への麻酔、カテーテル、入院、痛み・・・
また、卵管結紮した後で、もしかしたらまた子どもが欲しくなるかも知れません。実際に、再婚して新しいご主人さんとの間に子どもが欲しくなった・・・という人もいらっしゃいます。ご自分の年齢も考えて、妊娠可能な若い間に結論を出すことは控えた方が良いと思います。

